AI導入事例
「ChatGPTを業務で使いたい。でも顧客データや自社コードを外部のAIサービスに送るわけにはいかない」——多くの企業で聞く悩みです。今回は、倉庫で眠っていた暗号資産マイニング上がりの中古PC1台を、社員全員が使える「社内専用ChatGPT」に生まれ変わらせた実録です。追加のハードウェア投資は、ほぼゼロ。構築作業はAIエージェント(Claude)が主導し、実働2日でした。
素材は「型落ちの中古GPU 4枚」。
使ったのは数年前のマイニングブームで役目を終えたPC。搭載GPUは AMD Radeon Vega 56/64 が4枚——最新のAI向けGPUではなく、NVIDIA製ですらありません。世間の「AIサーバ」の常識からは外れた素材です。
しかし4枚合計のビデオメモリは32GB。ここに着目し、AI向けの標準手段(CUDA)が使えない制約を、オープンな描画・計算API「Vulkan」で回避する構成をAIエージェントが設計。2024年のGPT-4oに匹敵するとされるオープンモデル(300億パラメータ級)を含む、用途別の3つのAIモデルを同時稼働させることに成功しました。
- 日常チャット用(7B):毎秒43トークン——ChatGPT同等の体感速度
- 高度なコード生成・設計相談用(30B級):毎秒30トークン——GPT-4o(2024)級の賢さ
- エディタ内コード補完用(1.5B):毎秒127トークン——GitHub Copilotのような入力補完
画面はChatGPTそっくりのWeb UI。社員はブラウザを開くだけで、モデルを切り替えながら利用できます。エンジニアはVS CodeにCopilot風の自動補完も導入済み。すべての処理は社内で完結し、データは1バイトも外に出ません。
構築の主役はAIエージェント。人間は判断に徹した。
今回の構築は、当社が実践する「AI駆動開発」そのものでした。OSセットアップ、推論エンジンのビルド、ネットワーク分離設計、障害調査——手を動かしたのはAIエージェントです。人間が担ったのは、要所の意思決定と、物理作業(ケーブルの挿し直しなど)だけ。
特筆すべきは障害対応です。構築中、古いGPUの1枚が不調で通信断絶を繰り返しました。AIエージェントはカーネルログから故障箇所を特定し、「どの物理スロットのカードか」をファン回転で示して交換を誘導。さらにGPUが今後故障してもネットワークが切れない設計(MACアドレス固定)や、異常を5分毎に検知して自動復旧する監視まで仕込みました。いまこのサーバは、電源を入れるだけで全サービスが自動起動する「放置できる」状態です。
セキュリティは「侵入される前提」で。
社外からも使えるようインターネットにも公開しましたが、設計は「万一侵入されても被害を広げない」が前提です。サーバは専用ネットワーク(DMZ)に隔離し、社内の他システムへは一切到達できない構成。アカウントは管理者承認制、通信はすべて暗号化。攻撃者にとって「入っても何もない」サーバになっています。
かかった費用と、得られたもの。
- ハードウェア追加投資:ほぼゼロ(既存の遊休マイニングPCを再利用)
- 構築期間:実働2日(障害対応・セキュリティ設計込み)
- ランニング:電気代のみ(GPU電力制限で省電力化済み)。API利用料は定額ゼロ円・無制限
- 得られたもの:全社員が使える社内専用AIチャット+開発者向けコード補完基盤
最新GPUでなくても、NVIDIAでなくても、やり方次第で「実用レベルの社内AI基盤」は作れます。むしろ本質は、制約だらけのハードウェアを前に正しい構成を素早く見つけ出し、転んでも起き上がる仕組みまで作り込むこと——それはAIエージェントが最も得意とする仕事でした。
「うちの遊休マシン」も、AI基盤になるかもしれない。
「データを外に出せないからAI活用を諦めている」「クラウドAIのAPI費用が読めない」「余っているサーバやゲーミングPCがある」——ひとつでも当てはまるなら、社内AI基盤は思っているより近くにあります。
当社は、お手元の遊休ハードウェアを活用した「社内専用AI基盤」の構築を支援しています。
既存機材の適性診断は無料。レガシーシステムの刷新(AI Re:プラットフォーム/略称:AIRプラットフォーム)とあわせて、今すぐお問い合わせください。
お問い合わせフォーム(「社内AI基盤 相談希望」とお書き添えください)/ info@flagship-ai.jp
シリーズ「レガシー to AI 実録」
- 総集編:1台のPCで22システム・24.6万行 ― AI開発3.5ヶ月の実測記録
- 実録①:20年もののJavaを、約1週間でフル刷新
- 実録②:既存コード0行変更で、基幹系に新しい入口を作る
- 実録③:1ヶ月級の構成検討を、プロトタイプ2日+実測で
- 実録④:旧マイニングPCが2日で「社内専用ChatGPT」に(本記事)
※本記事の数値は2026年8月時点の実測値です。構築成果はハードウェアの状態・要件により異なります。