AIの利用料は、これから下がるのか、上がるのか

AIコスト

AIの利用料について、経営層から必ず聞かれることがあります。「これ、来年はいくらになるの?」——答えは簡単ではありません。トークンあたりの単価は、この2年で明確に下がってきました。それでも多くの企業で、AIの請求額は上がり続けています。この記事では、単価が下がっているのに費用が増える理由と、単価がこの先むしろ上がりうる3つの理由を整理します。

単価は下がっています。
それでも、請求額は上がっていきます。

まず事実として、単価は下がってきた。

値下げは実際に起きています。主要なAI提供各社は、この1年で繰り返し価格を引き下げてきました。背景にあるのは推論効率の改善です。ある大手AI企業の粗利率は、2024年のマイナス94%から2026年には約60%まで改善しました。注目すべきは、これが値上げによる改善ではないことです。同じ処理をより少ない計算資源で行えるようになった結果として、利益率が上がっています。

-94% → 約60%大手AI企業の粗利率(2024→2026)
約7.6倍同社の年間換算売上(直近7か月)
非公表定額プランに含まれるトークン量

それでも、請求額は増えていく。

単価が下がっているのに費用が増えるのは、利用量の増加が単価の低下を上回っているからです。同じ企業の年間換算売上は、直近7か月で約7.6倍になりました。単価を下げながら売上がこれだけ伸びるということは、業界全体でそれ以上のトークンが消費されているということです。社内でも同じことが起きます。使う人が増え、任せる仕事が増え、1人あたりの利用時間が伸びる。単価が半分になっても、消費量が3倍になれば請求額は増えます。

賢くなるほど、1回あたりの消費量が増える。

ここが見落とされがちな点です。AIは世代が進むごとに賢くなりますが、その賢さは追加のトークン消費として現れます。単価表の数字が据え置きでも、同じ仕事に必要なトークン数が増えれば、支払額は増えます。実際に起きている変化を3つ挙げます。

同じ文章が、より多くのトークンになった数え方世代が変わるとトークンの数え方そのものが変わることがあります。ある世代交代では、まったく同じ入力が従来の1〜1.35倍のトークン数として数えられるようになりました。単価が同じでも、請求は増えます。
考える深さを上げると、その分を消費する思考トークン最近のモデルは、回答の前に「考える」工程を持ちます。この深さは設定で選べますが、深く考えさせるほど思考のトークンを消費します。精度を求めるほど、1回あたりの単価は上がっていきます。
画像1枚あたりの消費が約3倍になった画像入力高解像度の画像を扱えるようになった結果、画像1枚の消費が従来の約1,600トークンから最大約4,784トークンへ増えました。精度は上がりますが、同じ枚数を処理する費用は3倍近くになります。

つまり費用は「単価 × 消費量」で決まり、この2年で下がってきたのは前者だけです。後者は、モデルが賢くなるほど増えます。単価の値下げ発表を見て安心するのは早い、というのがここでの結論です。

定額プランは、「今の条件」でしかない。

月額の定額プランは、AIが業務に根付くまでの導入価格という側面を持っています。ここで押さえておくべき事実が3つあります。

含まれるトークン量が公表されていない前提条件主要各社とも、定額プランに何トークン含まれるかを公表していません。示されるのは倍率だけです。公表されていない枠を前提に、来期の予算は組めません。
上限も価格も、これまで変更されてきた変更の実績利用上限の引き上げも、値下げも、実際に何度も行われています。変わってきたという事実は、これからも変わりうるということです。方向は提供側が決めます。
上限を超えた分は、定価に戻る限界費用定額プランは平均単価を下げますが、上限を超えた分は従量課金です。次の1トークンの値段は、いくら使っても安くなりません。

加えて、主要各社は上場を控えています。上場前後は収益性を示す圧力がかかる局面です。単価が今後どちらへ動くのかを、使う側が決めることはできません。

単価は選べない。消費量は選べる。

ここまでを踏まえると、企業側に残っている打ち手は明確です。単価は他社が決めます。自社で決められるのは、消費するトークン量だけです。そして消費量を下げておけば、単価が上がっても下がっても、影響は小さくなります。値上げに賭ける必要も、値下げを待つ必要もありません。

消費量を下げる、3つの現実的な打ち手①同じ資料を何度も読ませない——調べた内容を要約として残し、次の担当者やAIはその要約を読む。②社内のAIサーバを使う——整理・分類・要約といった定型処理は、自社に置いたモデルで行えば外部の従量課金が発生しません。③繰り返す文脈はキャッシュする——毎回同じ前提を送っている部分は、キャッシュを使えば大幅に安くなります。

私たちはこの考え方を、社内で実際に使っている仕組みとして形にしました。チームのAIが調べた内容を要約として共有し、読み直しに使われていたトークンを削減するSmartOptimizerです。要約の整理は当社内に設置したAIサーバで行うため、整理そのものに外部の利用料はかかりません。削減できたトークン量は、月別・案件別に数字で確認できます。

AIの利用料が今後どう動くかは、誰にも断言できません。断言できるのは、読み直しを減らした企業のほうが、どちらに動いても有利だということだけです。

※本記事の数値は、各社の公表資料および報道にもとづく2026年8月時点の概数です。価格・提供条件は変更される場合があります。最新の条件は各社の公式情報をご確認ください。

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